最近よくテレビで放映されている、女優の綾瀬はるかさんが出演する、NTTドコモの新CMを見たことがありますか?
そのCMとは、プロのピアニストと綾瀬はるかさんの指の動きを、センシングデバイスをお互いの腕に装着することでリアルタイムに同期させ、彼女が見事にショパンの「英雄ポロネーズ」を弾きこなすというものです。
勿論、このような技術はまだ実現されておらず、このCMはいわゆるやらせで、綾瀬はるかさんはめちゃくちゃに指を動かしているだけなのですが、音楽と一緒になるといかにも正確に弾いているように見えるので、女優の演技力はたいしたものだと思わされます。
しかし、こうした世界が近い将来実現するかもしれない、というのも事実なのです。
指の筋肉の伸び縮みというのは、主に脳から神経線維を通して筋肉に送られてくるイオン電流である電気信号に他なりません。ですから、ある曲を弾いているピアニストの脳の電気信号のパターンを正確にデジタル化し、第三者の脳にパルス電流としてデバイスを通じて与えることができるようになれば、理論上はピアニストの指の動きを第三者にコピーすることも可能になるわけです。
現状は、筋肉の電気信号の取得は容易になっているものの、それを伝える通信速度が神経の反応速度より非常に遅いことが実現へのネックとなっているそうです。
しかし、超高速・超大容量の6G時代になれば、速度のネックは解消され、ネットワークが人間の神経伝達の代わりになるぐらいのリアルタイム性が可能になると期待されています。
NTTドコモ等は、6G時代を見据えて、センサーを通じて取得した人間の動作や感覚の電気信号を遠隔にいる人が装着したデバイスやロボットと共有することで、同じ動作を共有する技術を「人間拡張技術」と名付け、遠隔手術の実現、職人の巧みの技の伝承、オンラインゲームのプレイ等々、様々な用途開発の研究を盛んに行っていると言われています。
まさに、綾瀬はるかさんのCMは、ピアノ演奏を例としたNTTドコモの「人間拡張技術」のデモンストレーションだったわけです。
さて、この技術をNTTドコモは2030年代に実現を目指すと言っていますが、本当に実現するでしょうか?
私の予想としては、進歩は止められず実現はするでしょうが、その用途は極めて限定されたものに制約されるのではないかと思います。
なぜなら、この技術は無限の用途があるだけにその影響は大きく、特に犯罪利用、軍事転用、子供への影響等々へのリスクから、事前のルール、モラルの確立が困難であり、結局医療や治療、介護といった分野に限っての適用にならざるを得ないと思うからです。
仮に、「練習を全くしなくても、これを付ければプロ並みにピアノが弾ける」というようなデバイスが発売されたとしても、ピアノを弾く喜びは、プロの真似をすることではなく、自分の成長を実感する喜び、自分なりの表現を見つける喜び、人に自分の感動が伝わった喜び、と理解をされている皆さんは、購入しませんよね😊