こんにちは、声楽講師の馬場裕子です。
今回は「ちょっとマニアックだけど読んでよかった本」の紹介をしたいと思います📖✨
「音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門」です!
「音楽をする人に限らず、何かを表現しようと思うすべての人に読んでほしい。」
と、ヴィオリストの今井信子さんが本の帯に寄せられています。
“アレクサンダー・テクニーク”…
聞いたことがある方もおられるでしょうか?
F.M.アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander, 1869-1955)はオーストラリアの有望な若い俳優でした。
しかしいつからか、舞台上で声がかすれたり、声が出なくなるようになってしまいました。
医者も治療のしようがなく、アレクサンダーは自分で原因の解明に乗り出し、三面鏡の前に立ってセリフをしゃべる瞬間の自分自身を観察しはじめたそうです。
そしてその結果、「”やるぞー”と思った瞬間に首の後ろを縮める」という自身の癖を発見しました。彼はそこに着眼し、それから頭〜首〜背中の理想の在り方を導き出し、「自分自身の上手な使い方」を回復させ、自分の声も取り戻しました。
この発見を他の俳優たちにも教えはじめ、医者の賛同も得て、1904年にはロンドンにあらわれ「ロンドン演劇界の保護者」として知られるようになったそうです。1930年には教師養成トレーニングをはじめ、今では世界中で約4000人のアレクサンダーテクニーク教師がいるといわれています。
おおまかな本の流れはこちらです。
第Ⅰ部「基本原則」
第Ⅱ部「実践・さまざまな取り組み」
第Ⅲ部「音楽演奏への応用」
なかなかの読みごたえです。お忙しい方はⅠ部とⅢ部だけでも読んでみるといいかもしれません。
またこの本の面白いのが、自己表現を職業とする多方面のスター達が沢山登場し、そして彼らの言葉が沢山引用されているところです。
演奏家、ダンサー、役者、スポーツ選手など、名言がありすぎて、私は読んでいて何度も胸を射抜かれておりました。
お気に入りを一つご紹介すると…
「演奏時の理想の精神」に関して、
「いわゆる “集中” は、一つのことに焦点を合わせて、他を排除する。しかし “認識” は本来包括的で何ものも排除しない」「集中している精神とは、注意深い精神のことではなくて、鋭い認識力を保ったまま物事に集中できる精神である」(ブルースリーの言葉を引用)
本当にその通りだなと感動しました。
あともう一つ…
アレクサンダーの提唱の一つ「ノンドゥーイング」
「目の前にあるいかなる困難にも目を奪われないように、躊躇したり意気込んだり油断したりしないように、自信を持って、次の動きに備えて待つ。」
自分の演奏時に置き換えても、頷けすぎて…。そのためにはどんな練習をしていけばいいのか、なんてことも第Ⅲ章に載っていたりもします。
共感してくださった方、興味が湧いた方、ぜひ読んでみてください!
難しいなんじゃらほいと思った方もいるでしょう。でも皆さん、
頑張れば頑張るほど出来なくなるとか、
緊張を抑えようとすればするほど緊張してしまうとか、
この音を出すのが難しいと意識すればするほど上手くいかなかったりとか、
そういう経験ってありますよね。
必死な時は視野が狭くなりがちですが、そんな時、もっと広く、総体的に自分自身を見つめさせてくれるようなヒントが、この本の中には沢山落ちています。(そして私も歌をお教えするとき、そういうアドバイスが出来る先生でありたいなぁと思います)
もし何かに行き詰まっている人がいれば、何か良いものを拾ってこれるかもしれませんよ📖🌟
今すぐどうなるとかではなくても、これからも音楽を続けていれば、ああ、こういうことかと体感・共感していく場面もきっとあるでしょう。
読みごたえはなかなかありますが、ご興味のある方は是非、読んでみてください📖✨
寒くなって来ましたね🍂音楽家は身体が資本です。風邪など引かないよう、手洗いうがい、暖かくして過ごしましょう🧣❣️
馬場裕子
(センター南教室・声楽/ボイストレーニングクラス担当)